養殖漁業でのスマートスーツの活用「丹後とり貝」の場合(2)

 丹後とり貝の養殖で、イカダから垂下されたコンテナは30kg以上にもなります。このコンテナの引き上げ作業は身体に大きな負担となります。特に夏場に水温が上がる時期はコンテナの中の水の入れ替えやコンテナの網交換などの管理作業で連日夜明けから仕事をしています。作業者は自分の体力を考慮し、十分に管理できる数のコンテナを所有します。つまり、生産量は自分の体力に規定されるのです。疲労や加齢による体力低下は収益に大きく影響します。また、十分に管理できなければ、丹後とり貝の品質は低下し、取引価格やブランド力を毀損することになり、他の生産者にも影響を与えることになってしまいます。

 ならば、機械化やロボット化を検討すれば良いのでは?と誰もが思います。もちろん京都府の試験場などで、イカダの上を移動してコンテナを釣り上げるウインチ等も過去には開発されたようですが、機械の設置にかかる時間やコンテナの上げ下げにかかる時間、機械のメンテナンスや動力などを勘案すると、「作業負担は減少するが、効率が悪く時間当たりの生産性が低い」ということで普及しなかったようです。無人化して時間をかけられるような作業なら機械やロボットに置き換えることができますが、作業速度を要求されるようになると機械の設置コストもかさむので導入は困難になるのでしょう。結局、作業は”人の手”を選ぶことになりました。
 つまり、求められているのは・・・

 体力を損なうことなく、作業負担を軽減して腰痛等の疾病を予防すること。その日、一日の作業をやりきること。そして長く働き続ける ”労働の持続可能性” を得ること

 村岡さんは、テレビで紹介されたスマートスーツを見て、直感的に「これだ!」と思い、インターネットで検索してスマートスーツのことを詳細に調べ上げ、スマートサポート社に電話で問い合わせをしました。
 スマートサポート社が提案している「軽労化®︎」という概念が、まさに村岡さんが求めているものでした。

 村岡さんは若い頃、重量挙げの選手だったそうです。重量物を持つときの姿勢や筋肉など身体の使い方についての知識は豊富です。重作業を少しでも楽にするために、コンテナの持ち上げは腰を折るのではなく、背筋を伸ばして太ももに力を入れる動作、つまりスクワットをすることで腰への負担を軽減していました。
 しかし、過労や加齢などによって体力が低下すると、膝を曲げずに腰だけで重量物を持ち上げるようになるのだそうです。村岡さんは疲れが溜まってきて、ついつい腰を曲げて作業をしてしまった時にもしっかりと腰を守るような器具を探していました。

 スマートスーツを入手した村岡さんは、実際に着用して作業現場で検証したところ、このスマートスーツの設計概念を理解し、身体のどの部分にどのような作用をもたらすのかを感じることが、すぐにわかったと言います。その作用や効果は、確かに村岡さんの求めているものでした。

 一方で、他の多くの仲間たちは、年中、腰痛発症の不安を抱えつつも、”今、頑張ってなんとかなっている。” ことで、特別な対策等は行なっていません。丹後とり貝のように、”人の手”に依存する仕事は、仕事をする人の身体のケア、メンテナンスが大事なのですが、仕事による疲労は主観的なものであり、蓄積疲労やその日の体調によっても疲労感が異なるため、論理的にその効果を示しても、実感として得られないということがあるようです。

 そこで、我々は、丹後とり貝の作業動作を可視化し、作業時に身体にかかる負担とスマートスーツ着用による軽労化効果を示しました。

(つづく)